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作成日:2011/03/21
経営者の皆さまへ!東北地方太平洋沖地震に伴う「休業」について(改定版)



 「休業手当対応マニュアル 改定版」

 「休業手当対応マニュアル 改定版」を作成しました!後半に雇用調整助成金の特例についてを追加しております!
 本情報は経営者・事業者向けです。お知り合いの方に会社経営をなされている方、従業員のいる個人事業主の方などがおりましたら、お知らせいただくと良いと思います。

「休業手当対応マニュアル」
〜震災の影響により休業する場合の給与の支払いについて〜

 労働基準法第26条に、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中労働者に対して、平均賃金の60/100以上の休業手当を支払わなければならない。と定められております。

 この度の震災の影響により、
・全日の休業を余儀なくされた
・一部の時間の休業を余儀なくされた
・原材料の仕入れや製品の納入等が不能なため仕事がなく、
交替で半数の社員を休業させた
・計画停電に備え社員を早めに帰宅させるもしくは自宅待機とした
 など、休業を余儀なくされる場合もあるかと思います。

 そこで、どのような場合に、使用者の責に帰すべき事由による休業となり休業手当を支払う必要があるのか、その一方で、使用者の責に帰すべき事由に該当せず、休業手当の支払いが必要ないのか詳しくまとめましたので、労務管理の判断にお役立ていただけたら幸いに存じます。



1.休業手当の支払いが義務付けられる「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは?

 天災事変等の不可抗力の場合には、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

  不可抗力とは?
 
 @その原因が事業の外部より発生した事故であること
 A事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
 
 の2つを備えたものでなければなりません。


2.どのような場合に休業手当の支払義務はないのか?

1)今回の地震により当該事業場の施設・設備が直接的な被害を受けた場合
 
 その原因が事業主の関与範囲外のものであり、原則として使用者の責に帰すべき事由に該当しません。

2)今回の地震により、当該事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不能となった場合

 事案ごとに、当該取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があります。

3)被災地に所在する派遣先事業場が閉鎖となったため、派遣元事業主が派遣労者を休業させる場合

 他の派遣先への派遣の可能性をも考慮して、判断する必要があります。

4)計画停電が実施される場合

 平成23年3月15日に次のような通達がでました。概要は以下のとおりです。
 @ 計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、休業手当は不要である。
 A 計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、休業手当を要するが、計画停電が実施される日に、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合、使用者としての休業回避のための努力を講じるも、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、休業手当は不要となる。
 B 計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期により、上記1及び2に基づき判断される。

(参考)昭和23年6月11日基収1998号/昭和27年5月6日基収1731号昭和61年6月6日基発333号/平成23年3月15日基監発0315第1号


3.具体例 Q&A

質問1 テナントビルが営業自粛を決定し、店の営業ができない場合は?

回答
:今回の地震により、施設・設備が直接的な被害を受けた場合は、原則として休業手当の支払いは不要です。

質問2 業界で18時以降の営業自粛が決定され18時で店を閉める場合は?

回答
:休業手当の支払いは必要と考えられます。(質問9もご確認下さい。)ただし、原材料の仕入、製品の納入等が不能となった場合での営業自粛であれば、休業手当の支払いが不要となる場合がありますので、例えば被災地への円滑な物資供給のため、業界をあげて営業自粛するような場合等、状況に応じてご相談下さい。

質問3 計画停電の恐れがあるので早めに帰宅してよいですか、という申出を了承した場合は?

回答:労働者の意思による早退ですから休業手当の支払いは不要です。

質問4 計画停電の恐れがあり帰宅難民になりたくないので、今日は会社を休んでよいですかという申出を了承した場合は?

回答:労働者の意思による欠勤ですから休業手当の支払いは不要です。
 
質問5 お客様が入らず営業にならないので、交替で労働者が休業する場合は?

回答:休業手当の支払いは必要です。ただし、製品の納入等が不能となった場合での営業縮小であれば、休業手当の支払いが不要になる場合がありますので、状況に応じてご相談下さい。

質問6 テナントビルから強制ではなくなるべく営業自粛を要請された場合は?

回答:休業手当の支払いは必要です。ただし、ビルに損壊が認められる場合など、休業手当の支払いが不要となる場合もありますので、状況に応じてご相談下さい。

質問7 計画停電の恐れがあるので、自宅待機とした場合は?

回答:計画停電の恐れ(=予定が公表されている)があり、社員を自宅待機させた場合において、計画停電が実施されなかったとしても、変更が公表された時期が前日夜間や当日早朝であるような場合には、計画停電時間帯の休業手当は不要と考えられます。計画停電の時間帯以外の時間帯については、使用者として休業回避努力を行い、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときも、同様に休業手当は不要と考えられます。

質問8 会社に出勤できても、仕事にならないので、営業社員を自宅待機とした場合は?

回答
:休業手当の支払いは必要です。ただし、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不能となった場合は、休業手当の支払いが不要となる場合がありますので、状況に応じてご相談下さい。

質問9 公共交通機関の運行が不安定であり、事故等を防止するため、所定終業時刻より早く帰宅させる場合は?

回答:休業手当の支払いは必要です。この場合、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が、平均賃金の100分の60に相当する金額(休業手当額)に満たない場合、その差額を支払うことになります。よって、例えば1時間だけ早く帰宅させる場合で、その日の賃金日額が休業手当額を上回る場合、支払いは不要となります。

                                  
4.雇用調整助成金の特例について

 雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が従業員の雇用を維持するために、一時的に休業を実施し休業手当を支払った場合、休業手当相当額の一部(中小企業で原則8割)の助成を受けられる制度です。
 この度、東北地方太平洋沖地震被害に伴う「経済上の理由」で事業活動が縮小した場合についても利用できる特例が実施されました。

【具体的な活用事例】

@交通手段の途絶により、従業員が出勤できない、原材料の入手や製品の搬出ができない、来客が無い等のため事業活動が縮小した場合。
A事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早期の修復が不可能であり生産量が減少した場合。
B非難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観光客が減少したり、農産物の売り上げが減少した場合。
C計画停電の実施を受けて、事業活動が縮小した場合。

注1)単に震災により建物、設備、システム等が被害を受けたことによる事業活動の停止又は縮小は助成金の対象になりません。
注2)非難指示などがでている場合においては、使用者の責めに帰すべき休業には該当せず、休業手当の支払いは不要とされていることから、助成金の対象になりません。
注3)計画停電の実施により、事業活動が縮小した場合も助成金の対象となりますが、計画停電中については、使用者の責めに帰すべき休業には該当せず、休業手当の支払いを必要とされていないことから、対象となるのは、計画停電の時間帯を含め休業した場合で、計画停電以外の時間帯に休業手当を支払った分のみになります。

【主な支給要件】

@最近3か月の生産量、売上高等がその直前の3か月又は前年同期と比べ5%以上減少していること。または、前年同期と比べ5%以上減少、あるいは、中小企業においては、生産指標が減少かつ直近の経常損益が赤字であること。
⇒ 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合、最近1か月の生産量、売上高等がその直前の1か月又は前年同期と比べ5%以上減少していれば対象
平成23年6月16日までの間においては、災害後1か月の生産量、売上高等がその直前の1か月又は前年同期と比べ5%以上減少する見込みの事業所も対象。

A都道府県労働局又はハローワークに事前に休業等の計画を届け出ていること。
⇒ 平成23年6月16日までの間については、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合、計画届は同日までに届け出ることにより、事前に届け出たとして扱ってもらえる。


【豊嶋社労士事務所よりメッセージ】

 考え方として、「不可抗力によるものであって、休業回避の努力を講ずるも、休業のやむなきにいたった場合」は、休業手当の支払いは不要と言えます。この場合の判断は、本マニュアルをもとに慎重にご判断いただく必要があります。
 しかし一方で、会社があるからこそ社員を守ってあげることができます。この未曽有の事態、労使がギリギリのところでお互いに協力し乗り切るしかない状態です。だからこそ、労使関係を大事に、個々の労働者に真摯に説明し、理解を得ることが重要と言えます。

 ご不明な点やお困りのことがありましたら、いつでもご相談下さい。

 豊嶋社会保険労務士事務所
 〒983-0038 宮城県仙台市宮城野区新田2-13-25
 TEL:022-235-1991 FAX:022-235-3186 e-mail:tsrj@syarosi.jp


(注意)
 このマニュアルは、平成23年3月18日現在の情報をもとに作成しております。内容は後で変更される場合があります。

 


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